翻訳練習のためのブログ(意訳あり)

[記事翻訳]K-POPシーンの“習う変態”、ノサンユン監督がNCT,THE BOYZ,IVEを撮影するやり方

[原文]

https://v.daum.net/v/20221120000107803?from=newsbot

[翻訳]

 

K-POPシーンの習う変態、若き天才、何と呼ばれようと1994年生ノ・サンユン監督はK-POPに自分だけの印章を押した。"カメラの前に被写体が立った時、僕は本当に愛してしまうんです。" 恋人が撮るように叙情的で密やかな視線の映像から、全面的に隠喩を入れ込んだ映像まで、ノサンユンが見つけ出したNCT,THE BOYZ,SuperM,威神V,IVEの見慣れたようで新しい一面。

 

「 HAUS of TEAM ノ・サンユン 」

NCTㆍTHE BOYZㆍSuperMㆍ威神VㆍIVE  作品に現れるノサンユン監督の特徴は人物本人の姿を導き出すことだ。密着した心理的距離、密やかで固有なフィーリング、物語が込められた眼差し、何かを言いたげな唇などノユンサンのカメラが被写体と目を合わせた時、私たちはすんなり恋に落ちてしまうものだ。

 

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Q : 釜山国際映画祭GVはうまくいったか

(GV  Guest Visitの略、質疑応答型の舞台挨拶)

 

A : 全座席売り切れに質問も降り注いだ。僕の映像を映画館のスクリーンで見ることになったことも、ファンの皆さんを実際に見たことも初めてで驚きの連続だった。客席を見て驚いた。僕がアイドルでもないのにこんなにもたくさんの方々が...?(笑い) 呆気に取られ不思議で嬉しかった。スクリーンで見ながら僕は本当に顔に執着しているんだな、タイトなカットをたくさん使っているんだなと感じた。(笑い)

 

Q : K-POPシーンの習う変態がいらっしゃった。(笑い) どうだろうか、皆あなたを若き天才と呼んでいるが。

 

A : ああそう言わないで。恥ずかしくて死にそうだ。謙遜する訳ではなく、今までインタビューを断ってきたことも、GVをしたくなかったことも見た目を売りにしたくなかったからだけど... こんなに断り続けるのも見た目を売りだと思っているようで出てきた。(笑い) 僕はただの過大評価された若造だ。ただしとても幼い頃からなりたかったことは確かで、本当にたくさんの映像を見て育ってきただけだ。

 

Q : 私たちが会う前に私が送ったメールに印象的な部分があった。小学校6年生の時からMTV VMAのディレクターになりたいという夢を見ていた見込みのある子どもだったと。

 

A : その通り。ビクトリアシークレットのショーの華やかなセットでジャスティンティンバーレイクがSexyBackを歌うのを見て目を剥いた。(笑い) 学校にも通う前の子どもの時から色々なケーブルチャンネルの音楽番組に夢中になってサンタクロースにムービングライト(舞台照明)をお願いしてちびっ子照明を貰うような子どもだった。ファッションエディターになりたかったし、PDにもなりたかったし、ショーディレクター、写真家にもなりたかったが結局集めてみたらビジュアルを作る人になりたかったようだ。

 

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THE BOYZ ‘Be Your Own King’.

 

Q : 中2の時初めてお小遣いで〈Vouge〉と〈GQ〉を買ってみたと。雑誌の好況期だった。その雑誌を通じてお洒落や態度を習ったのか

 

A : 東大門に行って服を買うのが1番のお洒落だった僕に海外ファッションの世界が開かれた。(笑い) アレキサンダーマックイーンのショーを見ながらこうやってトレンドをリードする人たちがいて、それが大衆化されリテール(一般消費者に向けて小売)され市場に出回る過程が伴うという流れを知った。魅了されたのはファッションだけではない。当時〈GQ〉は私たちが最高だ、私たちを知らないなんてといった多少攻撃的な態度だったが(笑い)それが格好良く見えたのだ。

 

Q : 私が感じたのはまさにそれだ。あなたの作品には確かにフューチャーエディター的な視線と質問がある。勿論今の時代に合わせて進化されたバージョンだが。(笑い) 個人作品 'KOREAN BOYS'はまさに当時の雑誌のフューチャー特集で扱うような企画だ。

(フューチャーエディター ファッション誌で社会的イシューや人物インタビュー、企画記事やコラムを担当するエディター)

 

A : チャン・ウチョル先輩の影響を受けた部分があると思う。(笑い) 自分だけの感覚でビジュアルを作り文を書く人だから非常に好きだった。最近会った時にIVEの'After Like'のミュージックビデオを見てよくやったと言ってくれた。(笑い) 'KOREAN BOYS'はただ韓国の男たちを撮りたかった。僕は新しい物語を生み出す素質がない。僕は僕が経験したこと、僕が見たことについてだけを語れる人だ。当時は僕も20代前半だったから僕が理解しているままの被写体を撮っていたし、大人になっていきながらだんだん被写体の年代も上がっていった。

 

Q : 人が気になるのか。

 

A : 僕は人が本当に好きだし嫌いだし、また好きだ。(笑い) 例えば僕は旅行に行って誰かに出会うとその人の歴史が気になる。どこでどうやって育って、どうして今ここにいるのか尋ねてみたくなる。

 

Q : この時期にファッション誌のアシスタントをしながら、インスタグラムが活発化していきビデオグラファーを探していた市場のニーズとうまく噛み合ったキム・ヨンジュン フォトグラファーと一緒に映像の仕事を始めた。写真より映像を1番に選んだ理由は?

 

A : 本能的に?(笑い) フォトグラファーの場合、最近はインスタグラムにポートフォリオをあげて注目を浴びればすぐプロでデビューできるが、その時には弟子システムがある。しかしビデオグラファーはカメラと自分だけでいい。チャンスももっと多いし。

 

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THE BOYZ AAA

 

Q : 韓国芸術総合学校 映像院では何を専攻したか

 

A : ドキュメンタリー専攻だ。ひとつの題材に対して執拗に入り込むことが僕の性格に合っていて。一年生の時には自分自身についてのドキュメンタリーを撮った。題名は '恋没歌' 。(笑い) 僕が愛していた、愛する人々を訪ねて行った。僕が好きだった初恋の女性、初恋の男性、僕たちが分け合って感情が何だったのか尋ね、思い出し、傷付きはしたが僕はこれからも愛していくと。そうやって少しありきたりに終わらせた。(笑い) 意外だと思うが、社会の暗い部分を明らかにして探り出したい気持ちと政治的な態度もある。最近やっている ' #notyours ' 写真作品にはそんな態度が埋め込まれている。例えば 'Different Dream'。地下鉄で通学していた時代に ' 無彩色を着た人々が曇った目をして動く姿を見て、この人たちはどこから来てどこへ向かっているのか、誰かは株価が上がることを願ったり、誰かは母親が健康であることを願ったり、各々欲望があるのだろう。' そんな考えを隠喩に込めた作品だった。大の大人の男が2002年に売られていた 'Be the Reds' Tシャツを着たこと写真は、体だけが育ち精神はそのままだと扇動されやすい僕らの時代の肖像だと思った。

 

Q : 何故 ' Not Yours ' なのか

 

A : 人々は自分が持っていることを当たり前だと思っている。だが当たり前なことなど無い。だからそう名付けた。君のものではない。(笑い)

 

Q : ドキュメンタリー監督になる考えは無かったのか

 

A : あったがそれよりビジュアルディレクターになる道が早く進行した。ただジャンプしてしまった。

 

Q : ディレクタークルーFILM BY TEAMを作り、〈DAZED〉コリアから依頼されたTHE BOYZデビューフィルムを皮切りにあなたのアイドル作品が始まった。その時のあなたは... 水を得た魚というかだろうか(笑い)

 

A : とてもとても面白かった。これが本当に僕とフィットした何かだと思った。

 

Q : その後の作品NCTジェヒョンの 'Poetic Beauty' が強く印象に残っている。アイドル産業での一般的な接近とは違った。叙情的で、私的でストーリー性があって、視線が感じられる。

 

A : 映画〈太陽と月に背いて〉でディカプリオが演じたランボーのように演出したかった。詩を書いて、読んで、朗読するように。ジェヒョンが殴り書きできるよう4種類の鉛筆を用意し、ジェヒョンが見る写真集8冊を用意してあれもやってみようこれもやってみようと熱意に満ちて提案したがSMが全て許可してくれて自由にできた作品だ。

 

Q : 今回の釜山国際映画祭で公開した、NCT DREAMのメンバー達の幼い顔を60秒間を長い呼吸で込めたのも良かった。シネマティックだった。

 

A : NCT DREAMのメンバーが最初のアルバム〈We Young〉を出す頃だったが、明るく活気に満ちて楽しいムードのコンセプトだった。僕はコンセプトの外にある、飾られていない少年たちを見たかった。それで60秒の間、見てきた姿そのままを込めた。最初は本名を使って、題名も '60秒のイ・ジェノ' '60秒のイ・ミニョン' だった。僕は隠されたところ、見せられていないところ、だが本当のところ。そういったところにいつも好奇心が向かう。

 

Q : 被写体を愛する能力があるようだ。まさに恋人かレンズを覗き込むような内密さが感じられるような。

 

A : カメラの前に被写体がいる時、本当に恋に落ちてしまう。僕は撮影する時、録画を止めずにずっとハンドヘルドで被写体に長い間ついて行くタイプだ。少し戸惑ったり、想像したり、自分の固有の姿を引き出そうと努力してみて、本来のものが飛び出してきた時の刹那を逃さない。普通カメラを意識していない時魅力的な姿が見えるのだ。

 

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NCT U 'THE BOSSES' (ドヨン、テヨン、ジョンウ)

 

Q : どうやって相手に武装解除させるのか。

 

A : まず雰囲気を解き放ってこれが撮影だということを意識させないようにする。それから自分が相手に本気だということを見せる。僕が最初に本心を見せて、たまにはピエロになり笑わせたりもして、自虐的なギャグを言ったりもして、友達のように、まさに知り合いのように接する。勿論僕は相手を知っている。撮影前に相手がどんな人なのか深く勉強してから行くからだ。だけどよく知ったようなふりはしないで、僕は君に内的に親近感があるから失礼のないところで僕は君を好きでいるから決して変なカットは使わないし、君の1番美しい姿を込めるために来たということをよく表現する。ここまで心をいっぱいに広げると、彼らも少しづつ開きはじめる。今では年をとったが仕事を始めた時には彼らと同年代だったことも助けになっていたようだ。(笑い)

 

Q : それ以降があなたの全盛期だ。クリエイティブディレクションまでするHAUS OF TEAMを作った。企画から始める作業をしたかったのか。

 

A : そう。FILM BY TEAMはディレクターチームだが企画にまで参加はせず、コンセプトが決まればそこでディベロップさせ始め撮影をするチームだ。その時は惜しさをよく感じた。この被写体を愛していてもっと良く撮りたいが、その子が着ている服が気に入らない。だがそれを僕が変えることはできない。'もっと良くするにはどうすればいい?なぜ毎回限度にぶつかる?' と考えていたら計画からやらなければいけないと考えた。このチームは僕含む4人のPD、副演出もいるがみんな一緒にクリエイティブな意見を出し合っている。

 

Q : 最初の作品でTHE BOYZの舞台裏のリアルな部分を込めたAAA写真集を担当した。ドキュメンタリーのように彼らのワールドツアーについて行きながら舞台裏のリアルな顔を撮ったが、こういったリアルな部分、素顔のような姿が好きなのか。

 

A : とても。僕は飾り立てる程に人間的な魅力が隠され、剥ぎ取る程に極大化されると考えている。

 

Q : その後にあなたの企画力をしっかり見せてくれた作品、THE BOYZアイデンティティフィルム 'ジェネレーション Z' を企画した。インタビュー形式でメンバー達個人の本心を引き出し、そこでコンセプトを掴み映像を作った。これがまさに 'フューチャー' 的なコンテンツというものだが(笑い) 私もインタビューやグラビアをたくさんやってきたので分かる。こうやって個人の本心を聞き、個性を捉え、それをビジュアルライジングさせるのは簡単では無いということを。

 

A : THE BOYZと契約するなりインタビューから始めた。僕はデビュー前から彼らを見てきたから近づくことは簡単だった。"最近どう?" "これはどうして?" こういった簡単な質問を投げかけ録音を聞きながら興味深い部分にハイライトを打った。会社では心配が多かった。とても正直で、憂鬱にも見えて、彼らの心から出発する本当の姿を加減なくさらけ出すことだったから。しかし立体的で人間的な部分を愛してくれる方々が多いと考え企画を固守した。必ず言及してくれたらいいのだが(笑い) これは大層なコラボレーションだ。心を開き正直に語ってくれたアーティストがいて、一緒に引き出したチームメイトがいて、それをやらせてくれた会社がいてこのコンテンツが生まれたのだから。

 

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NCT127 ‘Irregular Office’.

 

Q : その結果 "人々は僕を優しいと言うが、優しいだけじゃ魅力がないじゃないですか" というジュヨンの音声と共に悪い男のようなセクシーな姿が見せられ “JUYEON IS NOT SUCH A GOOD BOY”という字幕がついた。

 

A : 彼らの言葉から捉えられた個性と魅力をそのまま窓に浮かべるように作ってみたかった。とても些細な言葉から限界まで押し通す粘り気が必要な作品だった。ずっと妥協しながらこれもだめあれもだめとやっていたら、中途半端なものが出来上がるな決まってるからこういうのは最後まで押し倒さなければだめだと。(笑い)

 

Q : そして一種のリブランドフィルム 'Be Your Own King' ではジュヨンのイメージをまた純粋無垢にひっくり返してしまった。

 

A : 僕は反骨精神がある。人々が 'これだ' と言うと 'それじゃない他の新しいこともあるけど?' と見せたくなる。(笑い) 僕らは皆、相反する魅了を持っているのではないだろうか。長所だと思っていたことが短所にもなるように、短所だと思っていたことが長所にもなる。それで11人全員 既存のイメージを覆した。セクシーなジュヨンは純粋無垢に、キラキラしたニューはマスキュリン(男性的)に、成熟したサンヨンは子どものように愉快に、'ジェネレーション Z' では正直に憂鬱な部分を見せたキューは良く遊び、毒気がありクールに。アイドルがひとつのイメージで固定されると消耗されやすい。だから彼らの違う姿を探して立体的な人間だということを見せたかった。

 

Q : ドラマ〈宮〉をオマージュしてヨンフンをドラゴンローブに旧型携帯とテディベアを抱かせた時、やはりノサンユンという言葉が出た。(笑い)

 

A : それは長い間僕の中に刺さっていたイメージだ。ヨンフンにピッタリだと確信した。〈宮〉や〈猟奇的な彼女〉のような、僕より前の世代のドラマには妙な魅力がある。

 

Q : どのようにしてイメージを掴むのか。

 

A : まずムードを掴む。好きな音楽を大音量で流して1人1人噛み締めながら頭の中で服を着させ似合うイメージをマッチングさせる。その次にその子がどういう背景でどういう光でどういう表情で歩いてくるか想像する。

 

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THE BOYZ ‘GENERATION Z’.

 

Q : NCT 127の ‘Irregular Office’と ‘Regular Dream’ ミュージックビデオではメンバー達をオフィスの空間に連れて行きスーツを着せた時、 反応が熱かった。

 

A : これは本当にファン達がそこまで好んでくれるとは思わなかった。(笑い) ただ 'NCTが煌びやかでアバンギャルドなファッションを披露してきたから、シンプルで淡白にスーツを着せてみよう。オフィスにしよう。' という考えだった。

 

Q : 誰もが少しは持っているオフィスファンタジーを刺激したのではないか。

 

A : 本当に意図していなかった!(笑い)

 

Q : どちらにしよファンタジーを本当に良く構築しているようだ。

 

A : 僕がよく言われる言葉が対象化が上手だという言葉なのだが(笑い)、僕はただどうすればこの人が魅力的にみえるか考えただけだ。ある人は最大に飾り立てた時に魅力が露出し、ある人はとても難しい環境下にある時に美しいだろう。そうやって似合うものを探して、今自分が感じること、自分が見たいものにフルアクセルを踏むだけだ。(笑い) 僕は終わりを見るまで走り切る性格だ。

 

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NCT U ‘Baby Don’t Stop’.

 

Q : 初のガールズグループ、IVEの作品はどうだったか。〈LOVE DIVE〉から〈After Like〉まで、自信満々の少女たちのイメージを作った。

 

A : 未成年でガールズグループゆえに対象化を警戒しながら作業した。自信があり華やかに、対象外せず、今この時期の少女たちだけが醸し出せるものを探し出そうとした。僕は意図しなかったが男性アイドルのセクシーな魅力を良く引き出すというタイトルがあるから(笑い) もしかしたら問題が生じるかと女性スタッフたちと "これは危険に見えないか?" と何度もチェックし作業した。実は人間の魅力と性的な魅力は大根を切るように分離するのは難しいことだと思うから、人間を売りにしなければいけないアイドル産業で魅力的に見えて対象化はされないビジュアルをことはたくさんの熟考と検討が必要だ。そこに力を注いだようだ。

 

Q : 'ナルシシズム' というコンセプトはどうやって生かそうとしたか。

 

A : 僕はナルシシズムは態度にあると考える。とんな服を着ようとどんなヘアメイクをしようとどんなセットにいようと "私が最高だ" と考える態度。メンバー達にも常に "君たち最高だね" とディレクションをした。すると彼女たちも "そうだ、最高だ" とセット場で楽しんだ。(笑い)

 

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IVE 'I'VE SUMMER' フィルム

 

Q : サマーフィルムはノユンサンらしい作品だ。チョン・サラン作家に直接原稿を請託しメンバー達に朗読させたところが興味深い。

 

A : IVEのスーパースターなイメージやコンセプチュアルなイメージを暫く下ろして今この時だけ出来る少女のイメージを作ろうと思った。しかし僕が少女だったことがないから(笑い) その時期の少女の変幻自在な感情を描写してくれる人を考えていたらチョン・サラン作家が思い浮かんだ。僕はチョン・サラン作家の本が本当に好きだ。彼女の全ての本に慰められた。実は今まで並べた全ての過程が楽しい瞬間もあるが、たくさんの苦しみもあった。何故僕はもっと上手くやれないのか、何故これを出来ないのか、何故この環境で誰か最善を尽くさなかったか、そうやって越えなければいけない限界とハードルの間で奮闘の連続だった。それで不眠症にもなった。その度に慰めになったのがチョン・サラン作家の本だ。そしてある日友人が "サラン作家が君のSNSをフォローしている" というので驚いた。(笑い) 必ず一緒に何かをしたいと思っていたから、IVEの作品を共にできてとても良かった。ミーティングの時に作家の本をこれだけ持って行き、読みながら下線を引いた部分をお見せしたりもした。(笑い)

 

Q : チョン・サラン作家の文が入った 'I've Summer film' のように、私はあなたの作品にはストーリー性があると感じる。1枚のイメージでも叙事が植え付けられている。

 

A : ビジュアル作品をやる時はその前後の状況を具体的に想像するタイプだ。今思い浮かぶことだが 'A to BOYZ' ヨンフン編は屋上部屋で苦労しながら生きていく少年の話だった。屋上部屋がある建物の所有者に許可を得て撮っていたが隣の建物から1人のおじさんが怒りながらいらっしゃった。おじさんがドアをばんばん叩きながら怒鳴るのを収拾しながらすいません、すいませんと謝ったのだが、ヨンフンに "あのおじさんが君のバイトの社長だよ" とディレクションをした思い出がある。(笑い) 彼らはやはりそういった環境にさらされた経験が少ないから。

 

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IVE 'I'VE SUMMER' フィルム

 

Q : レファレンスはどうやって探すか。

 

A : スクリーンショットを本当にたくさんする。イメージに対する所有欲が強く今このMacBookにも映画とミュージックビデオ、ファッションフィルム、広告、バラエティ、各種映像のスクリーンショットを数万枚は集めた。YouTubeやVimeoでもアーカイブした目録もあるし、携帯、MacBook、外付けハードディスクごとに山積みだ。普段印象的な風景を見るとスナップもたくさん撮る。イメージ保存に対する強迫があるようだ。(笑い) OTTもNetflix、AppleTV+、ディズニープラス、tving、watcha、HBO等、見れるものは全て見る。新しいプロジェクトをする度にアーカイブに目を通してインスピレーションを受ける。セットの時もあれば、ムードの時もあり、ある光の時もあれば、表情の時もあり、ただバイブの時もある。それで僕は同じ太陽の下に新しいものは無いと考えている。

 

Q : ストーリーテラー達がよく言うことだが、ビジュアリストから聞くのは新鮮だ。

 

A : 既にかっこいいことはお兄さんお姉さん達がたくさん成し遂げている。(笑い) だから僕はどんなものとどんなものが出逢えば良さそうだ、この古典的なイメージに少し新しさを足そう、そんなアイディアを出して組み替える編集者に近いと考えている。

 

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IVE 'After LIKE'

 

Q : 最近ハマっているレファレンスは?

 

A : 歴史。朝鮮王朝、西洋中世史、近代史、ドキュメンタリーを主に歴史ユーチューバーのコンテンツも見ている。歴史を見ると人を理解できる。今イタリアに再びファシズムが起こることのように歴史は繰り返されない。過去を振り返ってみると人々がどんな心でどんな行動をするのか把握できるというか。結論付けられた物語だから人を全知全能な視点で見ることが可能で。だから僕は人が気になったらSNSではなく本を読むべきだと考える。

 

Q : あなたは何を美しいと思うか。

 

A : やはり人。人類を嫌悪したりもするが... (笑い) 嫌うことはそれくらい愛してもいるようだ。自然は一方向に流れるが、人は僕が目を向けるとその人も僕を見る。醜いながらも美しく愛おしい存在だ。

 

Q : 最近視線を捉えられた新鮮なビジュアルは?

 

A : HBOドラマ〈ユーフォリア〉。シーズン1は完璧だった。撮影、光はクレイジーで、彼らのジャンキーな表情、傷ついた表情、明るい表情、気楽な表情など全ての表情が良かった。それをタイトに捉えるカメラも。

 

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SuperM Group Trailer.

 

Q : 気になるビジュアルがあるとしたら?

 

A : 僕は牽制をせず愛してしまう。ファンになってしまう。力比べしてみても何の意味もない。一手ひざまずいて習い、自分のものにしなきゃ。だから '尊敬する' に変えるとしたら、サム・レヴィンソン監督、パク・チャヌク監督、ポン・ジュノ監督。僕はポン・ジュノ監督も〈マザー〉や〈怪物〉〈パラサイト〉を見ると大変なビジュアリストだと考える。

 

Q : アイドルのみならず一般人もフィードを飾ることに余念がない時代だ。インスタグラマブルなイメージ、売れるイメージの共通点は何だと考えるか。

 

A : 欲望。写真ごとに欲望が湧き立っている。(笑い) 僕は最近の全てのビジュアルがマキシマリズムだと思う。色々な麻辣湯が出されている中、寧ろこういう時期だからこそサラダのような退屈な味が愛されるのではないか。

 

Q : 今まで受けてきた作品のフィードバックの中で1番印象的だったものは。

 

A : 今日記者さんが言ってくれた言葉。僕は自分がストーリーがないと、僕が経験したことだけを表現できると思っていたが、イメージに叙事が植えられているという言葉が印象的だった。

 

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NCT ジェヒョン ‘Poetic Beauty’.

 

Q : デビューから今まで共にしてきたアーティスト達に対する感情は?

 

A : 戦友愛。僕は作業を引き受けると24時間アーティストのことだけ考え、カメラの前では本当に愛してしまうが、仕事が終われば線は越えない。仲良くなろうとはしない。カメラがついた時だけ僕たちはかけがえなく愛し合う友達だ。

 

Q : カメラの恋人だ。

 

A : こう見えて内向型だ。(笑い)

 

Q : 監督としての野望は?

 

A : 常に学生でいたい。これからアイドル作品以外にもミニドラマ、写真、ドキュメンタリーなど多様なジャンルに挑戦するつもりだ。ずっと不慣れな場所にいたいしそこで必死に習い吸収し、放出していきたい。人生を生きて行きながら放漫になったり、疲れて倒れたりもせず、よどみも腐りもせず、ずっと習い続けられたらそれで十分だ。

 

Q : あなたは何を格好良いと思うか。

 

A : 多くを語らないこと。言葉ではなく行動で見せること。だが今日は多くを語ってしまった。(笑い)

 

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IVE ‘I’ve Summer’.